伊木接骨院のコロナウィルス対策 その2
前回、発熱時、「頭・おでこ」と「胸」を冷やす大切さをお知らせしました。
発熱とともに、気管支炎や肺炎になる原因、もうひとつは「咳」です。
では、なぜ「咳」をするのでしょうか?
誤嚥(ごえん)の時に「気道の異物を外に出す」というのは分かりますが、
風邪や喘息、他に全力で走った時は、どうしてでしょう。
結論からいうと、胸郭が拡張した時に「咳」をしているのです。
胸郭拡張により気道(気管・気管支・細気管支)内の容積が増し、死腔の容積が増えることで換気効率が低下します。
この考えは現代医学にはありません。
一般的に「死腔」を認識している方はほとんどいらっしゃらないと思います。
「死腔」とは
呼吸による肺の換気量ですが、深呼吸でも100%換気できているわけではありません。
通常、呼気後も気道(気管、気管支、細気管支など)には空気が残っています。
この気道の容積を「死腔」と言い、その量を「死腔量」と言います。
おおよそ150 mlあります。
1回の換気量は通常450~500 mlで死腔量は150 mlですので、実際にガス交換に関与するのは300~350 mlということになります。
空気は肺胞まで到達しないとガス交換ができません。
気管・気管支・細気管支が拡張すると「死腔」が拡大しますので、当然「死腔量」が増加します。
肺胞まで到達する平常時の300~350 mlを維持しようとすると、
死腔量が50 ml増の200mlになれば換気量も50 ml増の500~550 mlになります。
死腔量が100 ml増の250 mlになれば換気量も100 ml増の550~600 mlになります。
死腔量が増加すればするほど呼吸は大きくなって換気効率を維持しようとします。
この拡大した気管、気管支・細気管支を元の容積に戻すための生理現象が「咳」をなのです。
必要だから咳をするのです。
しかし一般的には咳が出れば、咳止めの内服薬(気管支拡張剤)を処方します。
重症化すれば、吸引式の咳止めや消炎剤を使います。
咳を止めるための処方をします。
咳の原因というのは考えていません。
確かに繰り返す咳が原因で気管支炎や肺炎になることもあります。
なので、咳を止める必要があると考えるのは仕方がないかもしれません。
しかし、咳の本質を考えてえ、「なぜ咳がでるのか」、「どうしたら咳がとまるのか」を考えるのが最善だと思います。
では、なぜ気管、気管支が拡張するのでしょうか?
全速力で走った時は胸を張りながら走ること、走った後に呼吸が荒くなり大きな吸気で胸郭が拡大します。
全力で走ったあと、ハァハァと両膝に手を当てて下向いてはなるのは、胸郭を拡張しないようにする防御姿勢なのです。
風邪の時は37℃以上に発熱することで、体温は平熱より1~2℃以上上昇しています。
(体の深部温(核心温)は+1℃ぐらいです)
例えば、気温(室温)が20℃、核心温が40℃では、吸気された空気が20℃上昇しますので空気が肺の中で膨張します。
死腔を150ml、20℃の空気が40℃になるとして、シャルルの法則に当てはめると体積が約7%膨張します。
呼吸は1分間に安静時15回、1時間で900回します。
呼吸するだけで、死腔はどんどん広がり、死腔量が増えます。
発熱時、この空気の膨張を避けるために肺を冷やすのです。
肺が冷やされていると、空気は膨張しませんので、死腔量は増えません。
咳が出るという時点で死腔量が増えていると考えるのです。
咳が出始めてからでも胸(肺)を冷やすと呼吸が楽になり、咳を防げます。
また、寝込んで仰向けに寝ると少し凸カーブした背骨が伸び、胸郭前面が膨らみます。
そのため、長時間寝込むと胸郭が拡張咳が出やすくなるのです。
胸郭が拡張するのを防ぐ対応策が横向きに寝る(側臥位)ことです。
これを回避するためには呼気時にバストバンドを巻くことをお勧めします。
また、仰向けで適度な重さのウォーターバッグを胸に一定の時間載せることもお勧めします。
適度に冷却もできます。
「呼吸」とは、「吐いて吸う」と書きます。
安静時にも肺の中に空気は残存しています。
なので、「深呼吸」とは、その空気を吐けるだけ全部吐いてから吸うほうが換気効率がよいのです。
一般にいう「大きく吸って吐く」では残存している空気が残っている状態での換気となります。
バストバンドやウォーターバッグを使うと、空気を吐くことを容易に促してくれます。
2020年9月30日(水)朝日新聞に「腹臥位療法」の記事がありました。
「肺の換気機能は、肺の背側に大きく依存する。仰向け状態が続くと、重力の影響で江背側に血流が集まる上に、圧迫で肺の背側が潰れて血流の酸素化が悪化。健常な肺の胸側にも障害が生じやすくなる。」と記事にあります。
腹臥位で胸郭の拡張を防ぐ私の提唱する呼気を促す理論ではありません。
また、「医師、看護師、理学療法士らがチームとなって、患者ごとに体位変換のシミュレーションを繰り返し実施。スタッフを患者に見立てて試した後に、実際には、6~9人で患者の体位を変えた。」とあります。
私の提唱するバストバンドやウォーターバッグでしたら、1人のスタッフで対処できます。
また、肺炎とは胸部レントゲンやCTで診断されますが、白くなっているところが肺炎といわれます。
白いところとはどういう状態か。
「白いから、ここが肺炎」とだけのようにいわれているように思われます。
何かがあるから白いのです。
白く映っているのは何でしょう。
それは、血液なのです。
白く映っているところは出血して血液が充満しているという状態なのです。
血液中には鉄分があり、そのために白くなります。
血液が多い臓器の心臓や肝臓も白く映っています。
肺胞内に血液が充満していると、肺胞の中に空気が入らないのです。
では、なぜ出血するのか。
それは、咳の時、急速に拡張と収縮を繰り返す時に肺胞が破れ、毛細血管も破れるのです。
肺へは心臓の右心室から血液が送られます。
左心室から全身に送られる血流量と同量の血液が肺に送られるのです。
肺動脈には相当量の血圧が掛かっています。
「その1」でお知らせしました通り、タンパク質は熱に弱いのです。
発熱時、肺胞は激しい咳により、簡単に破れてしまいます。
時に高齢者は血管が脆(もろ)く、高血糖の方も血管が糖化していて脆くなっています。
肥満のかたも内臓脂肪が多く、横隔膜を使った腹式呼吸がしにくく、胸郭を使った呼吸になり、胸郭拡張傾向となっています。
喫煙者もタバコの熱が常に肺に吸い込んでいますので、肺のタンパク質が硬化している傾向になっています。
よって、高齢者、肥満、糖尿病、喫煙者に重症化リスクが高まるのです。
し、私の提唱する方が。論理的に自然です。
<咳のメカニズム>
① 喉の気道を閉じる。
② 内肋間筋、横隔膜、腹筋群を使って胸腔内圧を上昇させ。
③ 閉じた喉を開放し一気に息を吐く。
これは、ポン菓子を作る時の最後、「ポン!」という時と同じです。
この現象は、ある意味、爆発です。
これをキャビテーション(空洞現象)といいます。
(ポップコーンも同様です)
強い咳や、繰り返し何度も咳をすると、喉の表面にエロージョン(壊食)が発生することで粘膜細胞が傷つきます。
そのため何度も咳をすると喉が赤く腫れあがるのです。
咳が出る時は咳を我慢するのではなく、正しく咳をすることをお勧めします。
<咳の仕方>(第18回 日本構造医学会東京学術会議 発表 平成25年10月13日)
① タオルを3回以上細かくたたむ。
② タオルを両手の手のひらで口を覆うように当てる。
③ 両手のひらで強くタオルを押さえる。
(押さえる強さは、大声を出しても声が漏れないくらい)
④ 咳を1,2,3,4,5・・・と連続で吸気せず息を吐き切るまでする。
⑤ 吸気は鼻からで、大きな吸気をしないで、④を数回繰り返す。
④を数回繰り返すと咳は自然に止まります。
(注1)片手でしない。横を向いてしない。就寝時は特に。
(注2)タオルがない場合は片手でグーを作り、
真ん中を筒状にして空気が漏れないようにし、④を繰り返す。
これは、咳のパフォーマンスではなく、本当に効果的です。
(咳き込んで喉が痛くなった時)
塩水(2%くらい)に氷を入れ、冷たい塩水でうがいをします。
<喘息>
喘息は「発症即慢性化する」ともいわれます。
それは、吸引式気管支拡張剤に依存するためと考えます。
喘息は就寝時に呼吸がしにくくなります。
起坐呼吸が特徴的な呼吸です。
横になっていると呼吸困難が強まり、座位をとるか、後ろに寄りかかると楽になるため、この姿勢をとりたがる状態をいう。ぜん息発作が高度になると、横になっていられず、起坐呼吸を行うようになります。
肋骨は水平でなく脊柱から胸骨に向かって下がっています。
これは、直立二足歩行になったことで。胸郭拡張を防ぐために胸部の重みで下がっているのです。
「胸を撫(な)で下ろす。」とは安堵するという意味で、本当に体にいいのです。
四足獣の場合は、前肢で支持することで、胸郭拡張を防ぎます。
人間以外、咳をするというのは、あまり聞かないですが、
我が家で2匹の小型犬を飼っています。
抱っこして、しばらく移動した時や、トリミングから帰った後、呼吸がヒューヒューいう時があります。
抱えられたことで胸郭が拡張していると判断し、胸郭の整復をします。
すると、すぐに治まります。
なので、脇を閉めた腕立て伏せも効果的です。
膝つきや、立位で壁に手をつくのでも。
一息吹く間に腕立て伏せ5~10回。これを3セット。
腕立て伏せが困難な場合、
子供の玩具の「巻き鳥」を長~く吹く練習をする。
できるだけ長~く吹きます。
<まとめ>
肺炎は日本人の死因で癌、心疾患に次ぎ、脳卒中と並ぶ疾病です。
咳が出たらタオル、氷のうで重症化を防ぐことができるのです。
また、日頃から呼吸法(深呼吸)を吐くことを優先することで胸郭拡張の予防ができます。
体は、至って素直です。
自己管理で、できることはたくさんあります。
まさしく、「息を吹き返す」です。